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対談【ビフォーコロナ/アフターコロナのDX】

株式会社良品計画の経理財務部 部付部長 山本様をお迎えして、Beforeコロナ/AfterコロナのDXについて、Miletosの代表 朝賀との対談が行われました。コロナ禍でのDXへの取り組みや、DXプロジェクトでの失敗例、DX人材についてなどざっくばらんにお話ししていただきました。

▼登壇者紹介

山本 照晃 氏:株式会社良品計画 経理財務部 部付部長
慶應義塾大学経済学部卒。新卒で西日本旅客鉄道株式会社入社。その後アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。25年以上のコンサルティングキャリアを通じて、主にファイナンス領域を中心に業務改革、ERPなどIT導入、SaaSソフトウェアを活用したアジャイル型の短期導入、グローバライゼーション、中期IT戦略策定など幅広いプロジェクトに参画。2021年2月、思想・哲学に感銘を受けて株式会社良品計画に入社。現在、Finance & Accounting領域をはじめ、地域活性化活動、DXなど幅広い領域での活動を模索中。

朝賀 拓視:Miletos株式会社 代表取締役社長兼CEO
早稲田大学国際教養学部中退。Thammasat大学経済学部留学。Accentureにてクロスインダストリーでのデューデリジェンス実施による課題発掘からソリューションの策定、プロジェクト立ち上げまでを担当。グローバルプロジェクトでのソリューションを多数担当。2016年にMiletos株式会社を設立、取締役兼CVO(Chief Visionary Officer:最高事業計画責任者)に就任。現在代表取締役社長兼CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)。


【対談内容の一部をご紹介します】

コロナ禍でのビジネスやDXへの取り組みの変化

朝賀:コロナ禍になり、DXへの取り組みにどのような変化がありましたか?

山本 氏
:良品計画の中で起こったことですが、社内的にはペーパーレスの徹底、リモートワークなど色々ありますが、店舗がどんどん営業休止されECが加速するという現象が起こりました。ビジネスを維持するためにECを拡充し、マスクなどの新商品を今までにないスピードで販売しました。それらは最初EC上だけでの販売でしたが、相当な売り上げを上げさせていただきました。

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グローバルを見てみると、特に中国のECがどんどん進みました。中国にはYouTubeのようなメディアでショッピングチャンネルがあって、そこで無印良品の商品を買っていただくというライブコマースが進みました。コロナ禍を機にトレンドを数年先取りしているようなECの発展があり、中国だと店舗とECの融合がどんどん起こっていて、恐らくというか確実に日本でも店舗とECを融合させていく、そんな動きに拍車がかかったと感じています。

朝賀:コロナ禍で日本のDXは加速したと言われていますが、良品計画さん、そしてECという大きな枠の中でも、そういった動きが顕著に現れていたんですね。

弊社はAIテクノロジーを利用してビジネスプロセスを変革させるというのが命題ですが、コロナ禍でテレワークが浸透したり、コスト意識が高まったことにより、かなり引き合いが増えたと感じています。「DXをした方がいいんだろうな」という漠然とした雰囲気から、「アフターコロナで生き残るためにはDXは必須である」という風に、市場の認識が変化しように思います。

DXは、経営企画部であったりITの部署だったりが先陣を切って進める企業様が多いですが、今だからこそ、上層部と現場を巻き込んで進めていける絶好の機会ではないでしょうか。経営陣には、DXを進めることで会社にとってどのようなインパクトがあるのかを説明し、現場にはDXを進めないことでどのようなリスクがあるのか、丁寧に説明していく。全員が同じステイクホルダーなんだと認識してくれた企業様は、意思決定も導入スピードも早いと感じています。

DXが進むと、人から仕事が奪われてしまうのか?

朝賀:DXを進めると「仕事がなくなってしまうのではないか」という不安にかられる方も多分いらっしゃると思います。

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どういった形で不安を感じている方々を巻き込んでいくのが良いのか、ぜひ現場サイドからお話をお聞きできたら嬉しいなと思っています。

山本 氏: DXが進んで、今やっている会計のルーティーンな仕事は多分どんどん減っていきます。減っていくんですけれど、今やっていない仕事、つまり経営企画に近い仕事やリスク管理など、「今までできていなかったんだけど、デジタルをうまく使うことでできていく仕事」、そういう仕事をきちんと作ってシフトしていきたいなとは思っています。

朝賀:今後労働人口が減っていくことを考えると、ルーティーンな仕事はAIなどに任せて、人間は付加価値の高い仕事に従事するべきだというのは、弊社がAIを開発している理由でもあります。競争力を高めていくためには、人間はその能力を最大限発揮して、クリエイティブな仕事に従事した方がいい。そうなるためには個人レベルで危機意識を持ち、学ぶ姿勢が必要ですね。会社としては、DX後に新しく生まれる仕事についての説明であったり、学ぶ場を提供していくことで、従業員が新たなステージで活躍できるよう導いていく施策が必要かもしれないですね。

DX人材に必要なスキル

山本 氏:変化に対応し、学び続ける意欲は必要ですね。僕自身、DXをどうやって社会実装して、どう地域がよくなるかと考えるときに、やはりパッションも必要ですし、プログラミングできるレベルまでいかなくても、新しいテクノロジーに興味を持ち、一定程度の理解が必要だと思っています。DXを使ってどんな新しいことができそうか、ある程度自分でイメージを膨らませられるようになった方がいいです。コンサルじゃなくて自分たちで。

私もけっこう年取りましたけど、今PythonとかRといったプログラミング言語を勉強していて、それでどんなことができそうかという機械学習の初歩みたいなことは知って、イメージだけは持てるようにしています。
そうすると、どういうことが実現できるのか、そのためにどういうテクノロジーをどういう風に使うか、そこまでをできるだけ自分たちで企画することができます。あとは内製したり、できない部分はAIのベンチャーだったりに投げて、一緒にやっていけたらいいなと。

朝賀:それは大事ですね。ちょうど先日、弊社のCTOと話をしていたときに、エンジニアに求められる資質とはなんだろうという話がありまして、もちろんエンジニアリング力っていうのもあるんですけど、深い業務理解が非常に重要だとCTOが申しておりました。

弊社で言うと、経理部門のDXに関わらせていただいているのですが、業務の内容を知らないと、技術だけあっても前へ進まないんですよね。仰る通り自分たちでイメージを膨らませられるだけの業務とテクノロジーへの深い理解、そしてパッションが必要ですよね。これがないとなかなか前へ進まないとかリスクを取れないとかあると思うので、仰る通りだなと。

DXプロジェクトの失敗事例

朝賀:山本さんは、前職時代、DXを外から推し進める立場として障壁にぶつかったこともあると思うんですが、いかがでしょうか?

山本 氏:そうですね。前職時代(アクセンチュア株式会社)に直面した話をしようと思います。

前職時代は、会計・経営管理領域を中心として業務改革やツールとしてのERPなどシステム導入を数多く支援していました。大企業のDXといったときに、色々な会社の経営陣の方々にとってERPをDXのテーマと絡めてやるというのが、マーケットからの支持を得やすく進めやすいテーマだったと思うんですね。そもそもERPはDXなのかという問題もありますが。

難易度の高いERP導入では、現業部門の抵抗がしばしばありました。一流水準になりきれていない業務があって、それを経営陣が一流にしたいと思い、ERPのプロジェクトがよく始まります。そして経営と現場の間に意識の差が合って、この差を埋めるのをコンサルが引き受けて支援をするわけです。しかしながら、組織の壁とか現行業務のこだわりとかそういうのを突き崩していこうとすると、現場の方は負荷を感じ面倒に感じてしまうんですね。仕事内容も難しいので、だんだんとコンサルに仕事を丸投げすることも時に出てきます。そうすると、会社の自分たちの方で思考が少しずつ回らなくなってくる。

あとは現行システムが複雑すぎて、システムの中でデータやプロセスがどうなっているのかわけが分からなくて、そのうちにシステムをなんとか動かそうとするのが目的化してしまい、本当に得るべき効果を見失ってしまうというのは、アルアルだと思います。
そういうのを色んなところで多かれ少なかれ見てきました。

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私が今の会社(株式会社良品計画)に来て思っていることは、内部のそういったプロジェクトも必要だと思いますけれど、DXでよりやっていくべきことは生活者など社外に向けてやる仕事、現行業務に縛られないで外との関係性をDXでどう構築できるのかなというのを考えて、新たに作ったりする方が、いいDXなのかなと今は思ったりします。

朝賀:それは新しい視点ですね。まだまだ日本のDXは社内で閉じていると感じることが多いですが、むしろ外へと広がっていくためのDXですね。コロナ禍もあり閉塞感が広がっている中で、希望を掲げるような指針ですね。他にも、コンサル時代の現場で体感したDXの進め方のポイントなどはありますか?

山本 氏:4年ほど前にシンガポールで半年間仕事をしていたときに、シンガポール人の上司が「ERPみたいなもので基幹業務をガラッと作り変えるのがDXじゃなくて、DXって今あるレガシーはもうそのままにして、それをできるだけ小さくしていって、周辺にSaaSなどDXの新しいテクノロジーを入れて、そこをEAIやAPIできちんと繋いで全体として統括する。全部をいっぺんに変えるのではなく、少しずつ短期間ごとに変えていく。それによりDX導入リスクをコントロールできるし、効果検証もできる。とにかくレガシーを全てとっぱらおうみたいに考えない方がうまくいくDXだ」という話をしていて、今もそれはけっこう意識しています。

朝賀:あまり大きくやりすぎると、難しくて失敗するケースがあるよということですね。私が感じている現状のDXの難しさは、PoCにいくまでにかなり時間がかかってしまう日本の企業様もすごく多いように感じているという点です。効果が出るのが分かっているならやりたいという気持ちも、もちろん分かるんですけれど、そこになかなか進めないためにDXもなかなか進まないというケースがかなりあります。DXという言葉が使われ始めて久しいですが、もう少し意思決定のサイクルが早くなるとDXも進んでいくと思います。

DXにおける今の目標

朝賀:いま現在、DXという観点で山本さんはどんな目標をお持ちですか?

山本 氏:小売業界では競争が年々激しくなってきていて、DX視点だとECで稼いでいくというのが当たり前の競争環境に置かれています。また、効率化への貢献の視点もあります。2017年4月に発表した現在の中計では、DXも活用する結果として倉庫在庫50%削減、衣服・雑貨の店頭値下げ率20%改善などの目標があります。

一方で、私は業務の半分くらいの時間を使って地域活性化活動をやっていますが、「土着化」という経営戦略があります。地域の活性化に貢献し、地域の役に立つという大戦略であり目標です。当然、それに向けてはどんな風にDXが活用できるかも考えていく必要があります。中山間地の買い物難民の方々に対して、DXを活用して買い物をできる環境をどうやって作ろうか、地域活性化にどうDXは貢献できるのか、実はそんなことを考えています。

先日発表された2021年9月からはじまる中計の骨子でも「土着化」と言ってますが、そんなことを次の中計で本気で考えて実行しようと思っています。多分他の会社ではなかなかない視点かもしれないです。

朝賀:土着化、というのは面白いキーワードですね。一見、DXとは関係がないように思えますが、結局のところDXは人々の生活をよくしていくためのツールであり、暮らしそのものに着目するのは当然のことですね。弊社の今のプロダクトは、経理部の業務プロセスをDXしていくものですが、やはり現場の方々の声をすごく大事に考えています。使う人から「良かった」と言ってもらえるDXを実現したいですよね。

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そういう視点で見ていくと、DXはもっと大きな単位で、先ほど山本さんも仰ったように、社内で閉じず、外に広がるようにしてトランスフォーメーションが起こっていくのが自然であり、理想的だと思いました。

山本 氏:そうですね。これからのデジタルの世界って、コラボレーション・共創で、色んな企業の強みを持ち寄って企業を越えて、さらに企業だけじゃなくて市井の方々とか、生活者の方々とか、あとはデジタルを扱うボランティアの方とか、みんなが広くエコシステムで連携して、何か大きなテーマを成し遂げる。そんな時代が僕はくると思っていて。

今もいろんな会社の方々と協業の話を進めていたりするんですけれど、属するグループ・会社の枠を越えて大きなことができるといいなぁとすごく思っています。

朝賀:DXっていうと難しく硬いような話になりがちですが、企業間など色んな連携を進めながら次の世界にいこうというようなわくわくしたお話が聞けたのですごく良かったなと思っております。今日はありがとうございました。

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